キャリアの棚卸しの方法とポイント
過去の職務を「時系列×成果」で振り返る
- 業務の「工程」「技術」「管理」の3視点で整理する
- 評価された点・やりがいを感じた点を書き出す
- 「現場力」や「改善力」を可視化する
- 自分の「これからの軸」を明確にする
そもそも「キャリアの棚卸し」とは何か?
転職を考え始めたとき、多くの方が最初にぶつかるのが「自分には何ができるのか、何が強みなのか分からない」という壁です。
この壁を乗り越えるカギとなるのが、「キャリアの棚卸し」です。
簡単に言えば、これまで自分が経験してきた業務や成果、スキル、人間関係、価値観などを一つずつ丁寧に書き出し、言語化する作業です。
製造業に従事されてきた方にとっては、「何を作ってきたか」だけでなく、「どう作ってきたか」「どう改善してきたか」「どのような管理や調整をしてきたか」など、言語化が難しい部分も多くあります。しかし、これこそが他業界との違いであり、しっかり棚卸しすれば、強みに変えられるポイントなのです。
過去の職務を「時系列×成果」で振り返る
まずは、自分が経験してきた職務・ポジション・会社を時系列順に並べてみましょう。
エクセルやノートを使って、以下のような項目を横軸に整理します。
年代 | 所属部署・職種 | 担当業務 | 主な成果・経験 | 習得したスキル | 評価された点 |
---|---|---|---|---|---|
2018~2020 | 生産部門 | ライン作業(組立) | 生産性10%改善、ミス率削減 | 作業標準化、5S | 現場リーダーに推薦される |
この作業によって、何年に何をしていたのか、成果は何だったのか、見える化されていきます。重要なのは、「成果」にフォーカスすること。数字や具体的なエピソードがあると、履歴書や職務経歴書にもそのまま使えるようになります。
「工程」「技術」「管理」の3視点で業務を整理する
製造業の強みは、「多様な視点でスキルを持っている」ことです。棚卸しをする際は、単に「何を作っていたか」だけでなく、以下のような3つの視点から自分のスキルや経験を棚卸ししてみましょう。
工程視点
- 加工、組立、検査、梱包など、どの工程に関わったか
- その工程での工夫や改善は?
技術視点
- どんな機械を使っていたか(CNC、溶接機、検査装置など)
- 使えるツールやソフトは?(CAD、PLCなど)
- 特定の技術資格はあるか?(フォークリフト、溶接、電気工事士など)
管理視点
- リーダー経験、進捗管理、工程改善活動(QC活動、カイゼン提案)
- 教育担当、マニュアル作成、シフト管理経験など
この3つの視点から洗い出すと、「自分の強みが明確になった」と感じる方が非常に多いです。特に中堅層(30~40代)であれば、管理や改善の経験がキャリアアップに直結します。
評価された点・やりがいを感じた点を書き出す
自分が「どんな場面で評価されたか」「どんな仕事にやりがいを感じたか」も、棚卸しには欠かせません。転職後に後悔しないためにも、自分の価値観を可視化するステップです。
- 「新人の教育がうまい」と言われた → 教育・マネジメント適性
- 「段取りが早くて助かる」と言われた → 生産管理や調整に向いている
- 「細かいところに気がつく」と言われた → 品質管理に適性あり
「褒められたこと」は、自分の思わぬ強みに気づくきっかけになります。また、「自分が何にやりがいを感じたか」=「どんな職場が合うか」の判断材料にもなります。
「現場力」や「改善力」を言語化する
製造業出身の方が他業界やホワイトカラー職にチャレンジする際、「何をアピールしたらいいのか分からない」という声をよく聞きます。そんなときに有効なのが、「現場力」や「改善力」の具体化です。
- 現場力:「イレギュラー対応に強い」「作業標準書がなくても現場で即判断できる」
- 改善力:「日報の分析から不良率を下げた」「導線見直しで工数削減」
これらは、企画や管理職への転職でも高く評価されるポイントです。大事なのは、「自分には当たり前だった」ことが、実は他の人にとってはすごいことだという認識を持つことです。
「これからの軸」を明確にする
キャリアの棚卸しを通じて、最後にたどり着くべきは「これからどうしたいか」という未来の視点です。
- 「手を動かす仕事より、人を動かす側に進みたい」
- 「品質にこだわった仕事がしたい」
- 「製造×ITの分野で新しい挑戦がしたい」
- 「海外工場や外注先とのやり取りなど、グローバルな仕事がしたい」
この「軸」が明確になると、求人の見極めも、面接対策もぐっと楽になります。特に30代以降の転職では、「何をやりたいか」より「どう働きたいか(価値観)」が問われる傾向にあります。
棚卸しは「自分を再発見する」作業
キャリアの棚卸しは、単なる作業ではなく、「自分を見つめ直す時間」です。日々の業務に追われ、改めて自分の実績を振り返ることは意外と少ないもの。でも、それをやることで、自分の価値を再確認でき、自信をもって転職活動に臨めます。